12月26日、不動産大手の野村不動産が、裁量労働制の不正適用によって東京労働局から特別指導を受けていたことを、同労働局が発表したことが報じられました。

野村不動産の事案は、

調査や企画を担う労働者が対象の「企画業務型裁量労働制」を適用していた社員に、営業など対象外の業務をさせていた

と言うものです。

今後、支払われていなかった残業手当の具体的な算定が行われて、残業手当の支払いが行われることになるのでしょうが、野村不動産の事例は氷山の一角でしょう

裁量労働制の拡大は、このような「24時間ただで働かせ放題」のようなブラック企業を広げていくかもしれないと言うような好例ですね

そもそも裁量労働制とは何か

労働基準法において、裁量労働制とは、業務の性質上、実施する方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある場合に適用される制度です。そして、業務を遂行する手段や時間配分等の決定に関して使用者が具体的な指示をしないこととされています。

たとえば、ある日は5時間働き、その翌日には10時間働いた労働者がいたと仮定します。この労働者が、裁量労働制の下で、「みなし労働時間」が8時間の雇用契約を締結していれば、その労働者は、両日ともに8時間働いたものとみなされるわけです。
(”freee「人事労務の基礎知識」より https://www.freee.co.jp/kb/kb-payroll/overtime-pay-and-employees-on-flextime/)

 

今回問題になっている「企画業務型裁量労働制」とは何でしょうか

対象となる業務は、企業等の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、業務の遂行方法等に関し使用者が具体的な指示をしないこととするものです。したがって、ホワイトカラーの業務全てが該当するわけではありません(厚生労働省労働基準監督課)

適用対象は、経営企画スタッフなどきわめて限定的です。

そもそも営業職は、裁量労働制の適用対象外です
しかし、私がかつて営業職をしていたころ「営業は、本来残業は適用されないけど、うちの会社は特別」と言う説明を受けて、一日あたり1時間までしか残業が請求できませんでした。

あのころ、もし労働基準法を知っていて、正しい知識と使い方を知っていればという感じは今もあります。
しかし、営業の世界は残念ながら「営業は残業代が支払われない」という都市伝説は私が新入社員だった19年前はすでに通説的に広がっていました。いまは、営業職は裁量労働制が適用できないのに違法な適用をして残業代の支払いを不法に逃れようとする企業の動きが一般化しているような印象があります。

営業職は、普通の労働者と一緒です。原則として一日8時間ないし週40時間以上はたらくなど長時間労働の基準を満たせば企業には残業手当を支給する責任が発生します。裁量労働制など、もってのほかです。

裁量労働制の適用対象は、使用者や上司の指示を受けず、自由な時間に出退勤できるくらいの高い裁量性が求められて、対象も本社や本店の事業所で働くものであることが原則的に対象です。更に、企画業務型裁量労働制においては、裁量労働制の適用を受ける労働者の同意も必要です。

たとえば、今回問題になった営業職ですが、使用者が営業職に具体的な指示を抜きに自由度の高い企画裁量を与えるなどと言うのは考えられませんね。営業目標が達成できるまでは家に帰れないなどと言うのも、普通ではないでしょうか。

繰り返しますが、「裁量労働制」の適用対象となる職種や業務内容は、きわめて限定的なものです。
にもかかわらず、すでに裁量労働制が、不払い長時間労働の温床となっている抜け穴だらけの制度になってしまっていること、労働時間の長時間化、企業のブラック化を後押しするような制度になっています。

安倍首相は「働き方の多様化」を強調しますが、現実は「働かせ方の多様化」で労働者はますます業務の中での働き方の自由度が奪われています。使用者や上司の指示の有無を気にせずに、自由に出退勤できるわけでもなく、ましてや事業場の中において働き方を自由に自分の裁量でコントロールできるようなことこそ非現実的です。

どこの現場も、低い単価のもとで莫大な業務や過剰なノルマが実態です。「仕事が終わるまではかえれない」「目標を達成するまではかえれない」が実態ではないでしょうか。

安倍「働き方」改革は絶対に許してはいけません。裁量労働の拡大など、もってのほかです。

まずは、「働くルール」を企業に守らせ、1日8時間以上はたらけば普通に暮らしていける労働の循環を取り戻すことこそこの国の政治家がすべき仕事ではないでしょうか。

そのために、労働基準監督官の増員など、労働局の人員増強で相談と監督体制の強化も必要でしょう。

労働組合も、現場の実態に「仕方がない」となるのではなく、長時間労働を厳しくチェックする感覚、「36協定」の内容を厳しくチェックして長時間労働の上限を縮小するような運動を産業を超えて広げていくような努力、連合や全労連などのナショナルセンターレベルでの働きかけも求められるでしょう。